弁理士 千葉哲也 の部屋

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IoTに関する特許、ただ乗り論

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www.jpo.go.jp

 

あらゆるモノがインターネットにつながるIoT時代の特許制度の在り方、その中でも、いわゆる「ただ乗り論」については、現在、特許庁産業構造審議会 知的財産分科会にて議論が行われています。

 

6月の会議においては、以下のような意見が出た模様。

 

AI・IoT技術の時代にふさわしい特許制度の在り方について早急に議論を進め、日本が世界でリーダーシップを取れるよう施策を講じてほしい。韓国では実用新案法が改正されたが、このような新しい形態の知的財産保護について早急に検討して頂きたい。
消尽については事実関係をしっかりと踏まえた議論が必要。


現在の消尽法理は、権利の効力の範囲を定める法理という位置付け。権利者の意思による効果を議論するのであれば消尽法理の根幹にも関わる。どのような場合に権利者に利益を還元させる必要があるのか色々な事例を精査すべき。


知財の価値を上げるには特許権者においてより自由に権利活用できる環境が肝要であり、国としての在り方の観点も重要。


IoT時代では物に拘らず特に「価値」をキャプチャしてお金に変えていくことが肝要だが、このような観点から知財制度の在り方を検討することは日本の競争力の観点からも重要。

 

通信事業の世界では、以前、ただ乗り論が大いに議論された時がありました。

 

通信事業者は、通信ネットワークを構築するのに多大な投資をしている一方、その通信ネットワークを使ったサービスを提供している事業者(GoogleAppleなどのいわゆるOTT)は通信ネットワーク構築費用については何ら負担しないものの、多額の収益を上げている、ということをただ乗り論として問題視していました。

 

結局、何ら制度的な手当てはされずに今もこの状態が続いています。

 

今回は、IoTに関する特許で、IoT製品を開発する際に、開発者間で特許ライセンスの処理が行われ、IoT製品が販売されます。

 

この時点では、現在の法律上は、特許権は消尽といって、使ってもお金がかからない状態になっています。

 

そして、このIoT製品を使ったサービスが現在、流行っています。

 

例えば、ホームデバイスや各種センサーなどを使って、ビッグデータを収集し、それに基づいて、お客様にとって利便性の高いサービスを提供することで収益を上げている事業者が増えてきています(AmazonGoogleなど)。

 

この場合、このサービスには、IoT製品の特許は使われていないのでしょうか。

 

ここがなかなか難しい部分ですね。

 

使われているとすれば、やはり、きちんと対価を支払う必要があり、それはそれで儲けている人が支払うべきです。

 

ところが、現在の法律ではそのようになっていないので、今、その議論が行われているということになります。

 

今後、この議論がどのような方向に向かうのか、注目していきたいと思います。